赤ちゃんに飲ませる白湯は10分以上の沸騰を。衛生管理にも注意

赤ちゃんに飲ませる白湯は10分以上の沸騰を推奨。衛生管理も気をつけて

月齢6ヵ月を過ぎたら、ミルク、母乳に加えて白湯を飲ませ始める時期です。白湯と聞いても、はじめての方にとっては、あまりピンと来ないと思いますが、実は白湯の作り方には、いくつか注意点があります。適切な時間沸騰させなければ、カルキを除くつもりが、逆に有害な成分を増やしてしまうこともあります。白湯を作る時のポイントは、10分以上沸騰させること。そして、できれば、まとめて作って保存したいところですが、白湯はとても腐りやすいので、できるだけ早めに使い、保存する場合には衛生管理に気をつけて、冷蔵庫で保存することが大切です。

この記事では、乳幼児に飲ませることを想定した、白湯の作り方と注意点について解説をさせていただきます。

白湯は沸騰させた水道水を冷蔵保存して使いましょう

カルキを除いた白湯、ボトルウォーター、浄水器などを使いましょう

赤ちゃんに水道水を与えるときに気をつけてほしいのは、カルキを取り除くことです。カルキは「次亜塩素酸カルシウム」という化学物質で消毒のために水道水に入れることが義務付けられています。現在の水道水では、”次亜塩素酸ナトリウム”での消毒が主流ですが、ここでは一般的な名称のカルキとして説明します。カルキが含まれないボトルウォーターや浄水器などを使うことも可能ですが、一番一般的な方法は沸騰させてカルキを取り除くことです。白湯は準備をする手間がありますが、子供に安全な水を飲んでもらうためにも作り方を覚えておくと良いと思います。

沸騰時間は10分以上が目安

一般的な白湯の作り方は、水道水を沸騰させて冷ますだけです。しかし、残念ながらこれだけでは十分にカルキや有害成分を取り除くことができません。大人が飲む場合には、さほど気にする必要もないかもしれませんが、乳幼児に飲ませる場合には、10分以上沸騰させてから冷ましましょう。

白湯を保存する場合には衛生管理に気をつけましょう

白湯を作るのは意外と時間がかかってしまいますし、火を扱うので危険でもあります。忙しいご家庭ではまとめて作って、保存したいと思うかもしれませんが、白湯はカルキが含まれないため、腐りやすいので保存には向いていません。多めに作った場合には、かならず、きれいな容器に入れて、冷蔵庫など低温で保存するようにしましょう。とくに注意していただきたいのは容器の洗浄です。ポットなどは口が狭く洗いにくい場合もありますが、細菌は増殖が速いので、洗浄が不十分な場合にはあっという間に腐敗してしまいます。できれば、丁寧に洗浄をした後に、哺乳瓶などと同じように次亜塩素酸などで殺菌をするのがおすすめです。また、プラスチックの容器は、傷がつきやすく、そこに汚れが残りやすいので避けたほうが良いです。

沸騰はカルキとトリハロメタンを取り除くため

カルキを取り除くため

では、つぎに水道水を沸騰させる理由を説明します。水道水に含まれている成分の中で取り除かなければいけない成分はカルキ(次亜塩素酸カルシウム)とトリハロメタンです。カルキは衛生管理のため、水道水に加えることが義務付けられています。水道水に含まれる量であれば、健康へ影響は少ないため、大人は安心して飲めますが、乳幼児にとっては負担が大きいです。カルキは加熱によって分解されるためしっかりと沸騰させて、取り除きましょう。

トリハロメタンを取り除くため

もう一つの有害物質は、発がん性も報告されているトリハロメタンです。この物質はカルキが分解されてできる塩素と水道水に含まれる有機物が結合してできます。従って、このトリハロメタンは沸騰直後に最も多くなりますが、沸騰を続けると、次第に減少するので安心してください。美作女子大学の研究ではトリハロメタンは4分の煮沸で90%取り除くことができると報告しています [1]。また、海外の研究では5分間の沸騰で100%取り除くことができると報告しています [2]。もとの水道水に含まれているカルキの量や有機物の種類によっても異なるため、完全にトリハロメタンを取り除ける沸騰時間を伝えるのは難しいのですが、一般的には10分以上の沸騰が望まれていますので、目安に考えてください。

実際に白湯を作ってみよう

白湯を作る時の手順と注意事項

最後に白湯の作り方と注意事項を紹介したいと思います。作り方は、

1. 水道水を鍋ややかんに入れて火にかけましょう。

2. 沸騰したら、火を弱めてそのまま10分以上煮ます。(火の取り扱いには十分気をつけてください。)

3. 火を止めて、室温~ぬるいと感じる程度まで冷まします。

急いで冷ましたい場合には、哺乳瓶に入れて、哺乳瓶ごと水道水で冷ますのがおすすめです。また、カルキ除去機能がついている電気ポットやケトルもありますので、上記の手順で作るのが難しい場合には試してみてください。

保存の際には冷蔵庫での保存と容器の洗浄が肝心

繰り返しにはなりますが白湯は意外と腐りやすいため、できるだけ早く使い切りましょう。保存する場合には、衛生管理には十分に気をつけて、きれいな容器に入れて、冷蔵庫で保存してください。

さいごに

白湯は、言葉だけをとると沸騰した水道水を冷ましたものですが、赤ちゃんに飲ませるときには、カルキやトリハロメタンなどの有害成分を取り除くことが一番大切なポイントです。10分以上の沸騰は赤ちゃんがいる中では大変な作業ですが、慣れてきたときこそ事故は起こります。火の取り扱いには気をつけて、楽しく水分補給を行ってください。

参考文献

  1. 鵜崎 実, 古圧 志真子, 嶋津 暉之, 水道水中のトリハロメタンの煮沸除去に関する研究. 美作女子大学紀要 1998; 31, 65-71
  2. Ebrahim S. J, Bidarpoor F, Eslami A, Ebrahimzadeh L. Removal of Trihalomethanes from Drinking Water Via Heating Method . Biomed Pharmacol J 2016;9(1)
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食品会社で働く研究者。PhD(博士、医科学)。2児の父。普段は食品の機能性研究を行っています。食品の機能性、公衆衛生、栄養疫学、腸内細菌、統計解析などに興味があります。Twitterやブログで研究の紹介などを行っています。