白湯に最適な温度とは?食道がんのリスクも低減

白湯の適切な温度は?やけど予防に65℃以下を意識しよう

皆様は白湯を飲むとき、どのくらいの温度が好みですか?または、白湯の温度と聞いて、どのくらいの温度をイメージしますか?熱湯をイメージする人、お風呂くらいの温度をイメージする人、人によってさまざまだと思いますが、実際のところ、適切な白湯の温度というのは定まってはいません。

ですが、白湯は沸騰させた飲用水を冷ましたものですので、冷ましたという表現や、お湯ということを考えると、40~70℃くらいをイメージされている方が多いかもしれません。

では、実際にはどのくらいの温度が良いのでしょうか?お湯という定義を考えると40℃以上の温度になると思いますが、健康への影響を考えると、やけどの心配が低い、65℃以下の白湯が、体への負担が少なく、良いのではないかと思います。

この記事では、白湯の推奨温度について、いくつかの研究報告を踏まえ、私の考えを詳しく紹介をしたいと思います。(本記事では40~65℃を推奨していますが、筆者の私見であることをあらかじめご理解の上、お読みください。)

白湯の温度と健康の関係

65℃以上はやけどに注意

では、早速、なぜ40~65℃がおすすめなのか、いくつかの視点で紹介をしたいと思います。第1に一般的に提供される暖かい飲み物は。熱すぎると思われているためです。こちら [1] のレビュー論文では、飲料の温度とし好性の関係をまとめていますが、コーヒーや緑茶など、多くの暖かい飲み物では、飲み物として適切な温度よりも高い温度で提供されることを報告しています。

これは、コーヒーや緑茶を抽出するためには、ある程度高い温度が適しているからです。つまり、暖かい飲み物の温度は、おいしいコーヒーや緑茶を抽出するための温度であって、おいしく飲むのに適した温度ではない可能性があります。

第2に、やけどの予防のためには65℃以下が推奨されているためです。こちらの研究 [2] によると、飲み物の温度が熱すぎると口の中でやけどする危険があり、やけどを繰り返すと食道がんなどの原因になることもあるため、65℃以下を推奨していました。

このように私たちがよく飲んでいる暖かい飲み物は、実はし好性の視点からも、やけどの予防の観点からも熱すぎる可能性があるようです。

温度の下限は特に気にしなくてよい

一方で、何度まで冷やすべきかについては特に気にする必要はないようですが、お湯という定義を考えると40℃以上というのが自然かと思います。

白湯の温度としては、考えられない温度ですが、冷たい飲み物を飲み続ける場合の健康面への懸念も報告があります。たとえば、こちらの研究 [3] は、動物実験ではありますが、マウスに異なる温度の水をあたえたところ、0℃の水を与え続けたマウスでは、認知機能が低下したという結果が報告されていますので、冷えた飲み物を飲むときには注意をした方が良いかもしれません。

おすすめの飲み方と温度の目安

温度は40~65℃程度がおすすめ

ここまでの話をまとめると、白湯の適温は、明確な定義は見つかりませんでしたが、やけどの予防や飲みやすさを考えると、65℃以下が良さそうです。また、0℃のような極端な温度ではないかぎりは、温度が低い分には大きな問題はないと思いますが、「お湯」という定義を考えると、体温よりも暖かい40℃以上が良いと考えられます。

つまり40~65℃を目安に考えると良いと思います。

白湯の温度の調整方法について

続いて、白湯の温度の調整方法について紹介をしたいと思います。正確に調整したい場合には、温度計などを使うと良いですが、持っていない場合でも、少しだけ飲んでみて温度を確認しながら冷ますので十分だと思います。

手軽にできる熱湯の冷まし方としては、一度、別のコップに移してから戻すと、大まかに10℃くらい冷めます。コップ自体が暖まってしまうと10℃も下がりませんが、手軽に熱湯を冷ます方法として覚えておくと便利ですので参考にしてください。

緑茶をいれるときに、熱湯を急須にそのまま入れるのではなく、湯飲みを通すのを見たことがある方も多いと思います。一度湯飲みを通すことで湯飲みを温めることと、お湯を冷ますことができるのですね。

さいごに

最後にもう一度ポイントを振り返りたいと思います。白湯の適切な温度は明確には定められていませんが、私がおすすめする白湯の温度は40~65℃です。

そして、白湯の温度に関することで、特に気をつけてほしいのは、口の中のやけどです。口の中でやけどをしたときには、すぐに冷たい水でうがいをするなどの応急処置を行い、ひどい場合には医療機関を受診してください。こちらの記事に丁寧に解説されていますので、参考にするとよいです [4]。

やけどを繰り返してしまうと “がん” のリスクにもなります。口のやけどと聞くとおでんや小籠包などをイメージされる方が多いかもしれませんが、飲み物でやけどをする方も多くいらっしゃいますので十分に注意をしながら、白湯生活を楽しんで下さい。

  1. Abraham J, Diller K. A Review of Hot Beverage Temperatures-Satisfying Consumer Preference and Safety. J Food Sci. 2019;84(8):2011-2014. doi:10.1111/1750-3841.14699
  2. Dirler J, Winkler G, Lachenmeier DW. What Temperature of Coffee Exceeds the Pain Threshold? Pilot Study of a Sensory Analysis Method as Basis for Cancer Risk Assessment. Foods. 2018;7(6):83. Published 2018 Jun 1. doi:10.3390/foods7060083
  3. Wei JP, Wen W, Dai Y, et al. Drinking water temperature affects cognitive function and progression of Alzheimer’s disease in a mouse model. Acta Pharmacol Sin. 2021;42(1):45-54. doi:10.1038/s41401-020-0407-5
  4. 菊地 由利佳監修, 口の中をやけどして上顎の皮がむけた|大丈夫?応急処置の方法は, Medicalook (閲覧日2022.8.31, 公開日2022.1.12) https://epark.jp/medicalook/burns-mouth-peeling/
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食品会社で働く研究者。PhD(博士、医科学)。2児の父。普段は食品の機能性研究を行っています。食品の機能性、公衆衛生、栄養疫学、腸内細菌、統計解析などに興味があります。Twitterやブログで研究の紹介などを行っています。