科学的な白湯の作り方-おすすめの器具やポイント解説

白湯のおススメの作り方-調理器具や温め方のポイント

健康のため、乳幼児に与えるためなどさまざまな理由で白湯を作ることがあると思いますが、どのような方法で白湯を作っていますか。一般的には、白湯は沸騰させたお湯を冷ましたものを指しますので、白湯の作り方はコンロや電気ポットなどでお湯を沸かし、冷ましてつくります。

ですが、丁寧にお湯を沸かした後に、また冷ますことに、どのような意味があるのでしょうか。結論を言ってしまうと、一回沸騰させることで、カルキと呼ばれる”次亜塩素酸カルシウム”を取り除くことが最も重要です。現在の水道水では、”次亜塩素酸ナトリウム”が主流ですが、沸騰させることにより残留塩素を除くことができることは同じです。ここでは一般的な名称のカルキとして説明します。

一方で、暖かい飲み物が飲みたいだけの方も多くいらっしゃると思いますので、目的に応じた適切な方法で作るようにしましょう。この記事では、カルキを除きたい方、そして、ミネラル(鉄分)を白湯から摂取したい方に適切な白湯の作り方を紹介したいと思います。

目的の違いによる白湯の作り方

カルキを除きたいなら沸騰時間5分以上

白湯を作る方の多くはカルキを除くことを目的としています。カルキを除くと言わない場合でも白湯は普通の水よりもおいしいと感じる方は多いのではないでしょうか。

これは、水道水の消毒に使われるカルキが、他の成分と化学反応を起こし、独特の臭いを発生するためです。水道水に含まれるカルキの量はそのまま飲んでも有害な影響が出ない量に調整されていますので、必ずしもカルキを取り除く必要はないですが、健康のために取り除きたいと考える方も多いと思います。何よりも、カルキを取り除いた方が、よりおいしいです。

カルキは沸騰によって簡単に取り除くことができます。しかし、沸騰時間が短いと、カルキが分解されてできる塩素が、水に含まれる有機物と結合してトリハロメタンという有害物質となります。このため、カルキを取り除くためには、目安として5分以上の煮沸が必要です。

国内の研究 [1] では、4分の煮沸で90%以上、海外の研究 [2] でも、5分の煮沸でカルキもトリハロメタンも完全に取り除くことができると報告されていますので、沸騰時間の参考にしていただければと思います。

鉄分の不足が気になる人は鉄瓶や鉄鍋で作るのがおすすめ

白湯を健康のために飲むという方も多いと思います。その場合には、しっかりとカルキを取り除くことはもちろんのこと、さらに調理器具を工夫することで、白湯に含まれるミネラル(鉄分)を増やすことができます。鉄分は女性で不足しやすく、鉄欠乏性貧血にもつながるため、飲用水から補うことができるのはうれしいですね。カルキを取り除くひと手間をかけるのであれば、より健康的なものを取りたいというのは当然だと思います。

南部鉄器を使って実験した研究 [3] では、鉄瓶で1 Lの白湯を作ると、約0.2 mgの鉄が抽出されることを報告していて、量としては多くはないのですが、女性で不足しやすい鉄分を飲用水で補うことができるので、カルキを取り除くひと手間に加え、調理器具にも目を向けると良いと思います。

暖かい飲用水が欲しい場合には簡便性を優先しましょう

一方で、体を温めるために白湯を飲まれる場合には、上記のような作り方にこだわる必要はないでしょう。白湯の一般的な定義は、「一度沸騰させた水を冷ましたもの」ですので、厳密には白湯とは言えないかもしれませんが、水道水を電子レンジで温める、沸騰したお湯を水で薄めるなど、作り方にこだわりすぎず、簡便性を優先しても良いのではないでしょうか。

自分の目的に合わせて、適切な方法で白湯を楽しめたら素晴らしいと思います。

実際に白湯を作ってみよう

カルキを除くだけなら電気ケトル、電気ポットがおすすめ

次に白湯のおすすめの作り方を紹介したいと思います。まず、カルキを除くだけなら、電気ケトルや電気ポットにカルキ除去機能がついている商品があるのでおすすめです。

コンロで白湯を作ると、火のそばにいなくてはいけないので、それを負担に感じる方も多いと思います。電気ケトルやポットであれば、作り方も簡単で、何よりも安全です。一方で、電気ケトルやポットは温度が下がってくると再沸騰するため、冷ますことができないのが欠点です。飲む前に冷ます作業が人によっては手間だと感じるかもしれません。

冷まして飲むならコンロを使うのがおすすめ

冷まして飲む場合には、やかんや鍋でまとめて作る方がらくでおすすめかもしれません。5分程度沸騰させ、後はそのまま放置してよいので、都度冷ます必要もありません。再沸騰の電気代もかからない点も魅力です。

やかんや鍋で白湯を作る時には、カルキを取り除くためにも、沸騰中はフタをせずに、水蒸気を逃がすようにして下さい。また、繰り返しになりますが、鉄分の不足が気になる方はやかんや鍋をステンレスから鉄器に変えることで補うことができます。

さいごに

この記事では白湯の作り方について、解説しました。

カルキを取り除きたい場合には5分以上の煮沸が目安となり、鉄分の不足が気になる方は鉄器を使って煮沸を行うことで鉄分を補うことができます。一方で、体を温める目的であれば、このような手間をかけて白湯を作る必要はないと思いますので、電子レンジを使うなど簡単な方法で行うと良いと思います。

この記事が、白湯を作るときの参考になったらうれしいです。

  1. 鵜崎 実, 古圧 志真子, 嶋津 暉之, 水道水中のトリハロメタンの煮沸除去に関する研究. 美作女子大学紀要 1998; 31, 65-71
  2. Ebrahim S. J, Bidarpoor F, Eslami A, Ebrahimzadeh L. Removal of Trihalomethanes from Drinking Water Via Heating Method . Biomed Pharmacol J 2016;9(1)
  3. 今野暁子, 及川桂子, 調理中に鉄鍋から溶出する鉄量の変化, 日本調理科学会, 2003; 36(1):39-44.
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食品会社で働く研究者。PhD(博士、医科学)。2児の父。普段は食品の機能性研究を行っています。食品の機能性、公衆衛生、栄養疫学、腸内細菌、統計解析などに興味があります。Twitterやブログで研究の紹介などを行っています。