不眠解消!寝る前に白湯を飲む時に注意したい自律神経への影響

白湯を寝る前に飲むときに気をつけるべき自律神経系への影響

みなさまが、白湯を飲むのはいつでしょうか?みなさまの中には、夜のリラックスタイムに白湯を飲むという方もいらっしゃるのではないかと思います。白湯にはリラックス効果があるため、一日の疲れを休めたい夜に飲むこと自体はおすすめですが、いくつか注意点があります。

気をつけていただきたいことの一つに、寝る直前に飲む場合の白湯の温度があります。暖かい白湯を飲むと、体の深部が暖まりますが、実はこれが睡眠の質を下げてしまう可能性があります。寝る直前に飲む場合には人肌よりもぬるい温度まで冷ますか、どうしても暖かい白湯を飲みたい場合には、就寝の2時間くらい前に飲むようにするのがおすすめです。

この記事では、自律神経と睡眠の質に焦点を当て、夜間に白湯を飲むときの注意点を、紹介したいと思います。

自律神経系と水分摂取のつながり

就寝前は体を温めないほうがよい

早速、自律神経系に着目して睡眠の質と水分摂取について解説をしたいと思います。

まず、睡眠の質を高めるために、意識してほしいことは、自律神経の副交感神経を優位に働かせることです。

例えば、睡眠研究の第一人者であるスタンフォード大学の西野先生の著書では、睡眠の2時間前に入浴をすることが勧めています。この理由が、入浴によって全身の血流が高まり、自律神経の交感神経を優位にするため、就寝直前は避けるようにすすめています[1]。

自律神経は睡眠の質を解説する上で、非常に重要な用語ですので、次の項で詳しく見ていきましょう。

自律神経は交感神経と副交感神経から成る

自律神経とは ”意識とは無関係に働く内臓器官を支配する神経系” です(コトバンクより)。自律神経系は心臓や消化器系などの内臓の働き、唾液腺や汗腺などの活動を調整しています。

この自律神経系は交感神経と副交感神経の二つの神経系から構成されていて、交感神経と副交感神経は綱引きのように、常に互いに引っ張り合っています。交感神経は興奮しているときに優位に働く神経系で、副交感神経はリラックスしているときに優位に働く神経系です。

つまり、リラックスモードをつかさどる副交感神経が優位に働いているときに就寝すると、より自然に眠ることができます。

血流によって自律神経を調節される

それでは、どうして白湯の温度で自律神経が調節されるのか解説をしたいと思います。ポイントとなるのは、末しょう部と深部(しんぶ)の体温や血流の量です。

手先など末しょうの血流量が多いときには副交感神経が優位に働きます。身近な例では、赤ちゃんが眠るときに手が暖かくなることを経験したことがある方も多いのではないでしょうか。これは末しょうの血流量が上がり深部体温を下げている証拠です。

一方で内臓など体の中心部(深部)の血流量が多いときには交感神経が優位に働きます。身近な例では、興奮して心臓がどきどきすることをイメージすると分かりやすいですね。この時には、心臓に近い大きな血管での血流量が多くなり、深部体温も上がっている状態です。

このように、末しょう部あるいは心臓に近い大きな血管の血流をコントロールすることで、交感神経、副交感神経のバランスを調節できます。

暖かい白湯は就寝2時間前、冷たい白湯は直前でも

では具体的には白湯の飲み方がどのように血流に影響するのでしょうか?

まず、白湯の温度に限らず水分を摂取すると、発汗作用により深部体温が下がり、副交感神経が働きやすくなります [2]。

水温が低い場合には、発汗作用に加えて、内臓を直接冷やすため、より早く深部体温を下げたという報告があります [2]。一方で、暖かい白湯を飲むと内臓を温めるため、深部体温が上がります、つまり交感神経が優位になるのです。

このようなことから、暖かい白湯の場合には、就寝直前は避け、早めに白湯を飲むことをおすすめします。体の深部を温める入浴は就寝の2時間前がよいと言われていますので [1]、2時間前くらいを目安にするとよいかもしれません。

一方で冷たい白湯や人肌程度のぬるめの白湯は、就寝直前に飲んでいただいても問題ないです。

さいごに

今回の記事では睡眠の質を高めるための白湯の飲み方について紹介をしました。ポイントをまとめると、以下の通りです。

  • 水分補給自体はリラックス効果があるため夜に飲むのはおすすめです。
  • 熱い白湯は交感神経を優位にし、興奮モードになる可能性があるため、人肌程度のぬるめの白湯が良いでしょう。
  • どうしても熱い白湯が飲みたい場合には就寝2時間前を目安にしてください。

白湯の温度の違いが、自律神経のバランスを変える可能性があるというのはとても興味深い話です。また、水分補給が発汗を促し、副交感神経が優位となるため、リラックスモードになること。その一方で、内臓が暖めると、交感神経が優位となるため、興奮モードとなること。この2点を覚えていると、睡眠の質に限らず、白湯を摂取するときの温度の参考になると思います。

最後に、就寝前の水分摂取で注意していただきたいこととして、夜間頻尿があります。夜間頻尿は睡眠の質を下げるとても大きな問題ですので、就寝前の水分の過剰摂取には十分気をつけてください。また、厚生労働省がすすめている水分の摂取方法は少量ずつ、細目に、一日で1.2 L以上と言われています [3]。就寝前に白湯を飲む習慣は、睡眠の質を高めるかもしれませんが、飲み過ぎには十分、気をつけて、習慣にしていただければと思います。

参考文献

  1. 西野精治, スタンフォード式 最高の睡眠, 2017/3/8, サンマーク出版
  2. Hosseinlou A, Khamnei S, Zamanlu M. The effect of water temperature and voluntary drinking on the post rehydration sweating. Int J Clin Exp Med. 2013;6(8):683-687. Published 2013 Sep 1.
  3. 厚生労働省、「健康のため水を飲もう」推進運動(検索日:2022/7/24)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html
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食品会社で働く研究者。PhD(博士、医科学)。2児の父。普段は食品の機能性研究を行っています。食品の機能性、公衆衛生、栄養疫学、腸内細菌、統計解析などに興味があります。Twitterやブログで研究の紹介などを行っています。